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訴求

日本の奇妙な文化としてパッケージに貼られる訴求シールがある。もう何十年も続く日本独自の文化だ。基本デザインの上に堂々と貼られる「No.1」や「おいしくなりました」の文字にどれだけの効果があるのかといつも疑問に思う。

パッケージデザインに関わって20年近くになるが、この訴求シールに効果があったと実感したことは一度もない。スーパーやドラッグストアで何も考えず空っぽのような意識で訪れる人がほとんどなので、「見ていない」というのが率直な意見ではないだろうか。訴求シールを利用している唯一のブランドなら機能するのかもしれないが、全ブランドが当たり前のように利用していては説得力は無に等しい。

一番の問題は、基本デザインが隠れた状態で商品を選ぶことだ。もしもCDショップで3cm角の訴求シールが中心部に貼られる仕組みを導入したらどうなるだろうか?ネットショッピングに対して唯一の武器である「手に取って選ぶ楽しさ」を奪うことになり、CDショップは世の中からすぐに消えてしまうだろう。購買意欲をそぎ落とす訴求シールの仕組みは経済的な損失を生んでいると言える。

日本の美意識は、ものの本質だけで成立させる簡潔性にあったはずだ。一年間限定で国内すべてのパッケージ上の訴求シールを禁止して、基本デザインだけで勝負する日本を試してみてはどうかと思う。きっと目深に帽子を被ったモデルたちをオーディションするような毎日から解放された喜びの声が多数あがるだろう。